卵子凍結は、がんや白血病などの治療の過程で、将来の妊孕性(妊娠するための力や能力)が損なわれる方に対し、前もって卵子を凍結する「医学的卵子凍結」と、健康ではあるものの、将来の不妊のリスクに備えて卵子を凍結しておく「社会的卵子凍結」があります。
日本生殖医学会の倫理委員会では2013年に「医学的卵子凍結」および「社会的卵子凍結」に対し、「未受精卵および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」を作成しています。
「社会的卵子凍結」に関するガイドラインでは、「加齢により妊娠率が下がる可能性がある場合は、未受精卵を凍結できる」、「卵子凍結は成人した女性が対象」、「未受精卵の採卵は40歳未満まで」、「未受精卵を使用するのは45歳未満まで」という見解を示しています。このガイドラインが作成された2013年当時といえば、「卵子の老化」という概念がちょうど社会に広まった時期です。
「社会的卵子凍結」については、早いところでは2008年頃から取り組んでいた不妊治療施設もあります。ですが、SNSの普及とともに卵子凍結の認知度が高まったのはここ最近のことと言えるでしょう。「医学的卵子凍結」については、2021年4月より助成金の対象になっています。
受精卵を用いた不妊治療とは違い、卵子凍結(未受精卵凍結)の歴史は浅く、実際に凍結した卵子を用いて出産した例は日本でも症例数がそれほど多くありません。このため、卵子凍結で生まれた子への影響や、具体的な費用対効果については、これから検証していくことになります。また、技術とは別の問題として、せっかく卵子凍結をしても、パートナーがおらず凍結卵子を使う機会がないということも現実として多くあります。