例えば、本人に代わって適切な価格で浄水器を購入するための交渉をしたり(代理権)、ご本人がひとりで余計なものを買ってしまったら、取り消す旨を伝えたり(同意権・取消権)して、ご本人が不利益を被らないように支援します。この場合、支援する人は、ご本人の希望を尊重し、生活状況、体力や精神状態などを配慮して、ご本人にとって最も良い方法を選んで行うことになります。
A:法定後見について
『法定後見』とは、本人の判断能力が既に失われたか又は不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人を法律的に支援する制度です。成年後見人等の権限は、基本的に法律で定められています。
法定後見制度を利用する簡単な流れは、
①家庭裁判所へ後見等の開始の申立をする。
②家庭裁判所が審判して、後見を開始して良いか調査し、必要な場合は、後見人等を選任する。
③家庭裁判所が審判した内容に基づき、後見人等による支援が開始する。
となります。
裁判所に申立てができる人は、本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長等となっています。子どもや4親等内の親族がいない環境で高齢になり、判断能力が不十分になった場合は、市町村長に申立てをしてもらうことになります。市町村長が申立人になるのは、「福祉をはかるため、特に必要があると認めるとき」とされていますが、具体的には近所の方、ケアマネジャー、地域の社会福祉団体の支援により市町村申立てが行われることになります。ただし、実際にこの申立てが行われるまでには時間がかかると言われています。
B:任意後見制度について
『任意後見』は、本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、将来自分の後見人になってもらいたい人、またその人に代わりにしてもらいたいこと等委任する事務内容を公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になったら、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行うというものです。つまり『任意後見』は、判断能力が低下した時のために事前に備える制度です。
ここでは、今決めておくことができる『任意後見制度』についてもう少し詳しく説明させていただくことにします。
『任意後見制度』を利用するためには、まず任意後見人になってもらう人(任意後見受任者)と「任意後見契約」を結びます。
任意後見人は、成人であれば基本的には誰でもよく、ご自身の信頼できる人、身内の方や友人でも問題ありません。また弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家に依頼してもよいですし、法人(例えば、社会福祉協議会等の社会福祉法人、リーガルサポートセンター、家庭問題情報センター等々)に後見人になってもらうこともできます。
任意後見の流れは以下のとおりです。
■ステップ1任意後見受任者との間で、生活面や病院・施設の利用、財産の管理でどんな支援をしてもらうのか、また、その報酬をいくら支払うか、などの契約内容を決めます。契約内容をどうしたらいいのか等ご不安な場合には、司法書士や弁護士等にご相談いただくこともできますし、次のステップ2で公正証書をお願いする公証人からも、任意後見契約の内容等についてアドバイスを受けることもできます。
■ステップ2任意後見契約を締結するには、任意後見契約に関する法律により、公正証書でしなければならないことになっていますので、公証役場に行き、任意後見契約を“公正証書”で結びます。公正証書の原本は公証役場で保管し、正本は本人と受任者がそれぞれ保管することになります。そしてこの任意後見契約は、公証人の嘱託により、法務局で登記されることになります。ちなみに、この時点で登記される事項は、「本人、任意後見受任者、代理権の範囲」です。
以上が任意後見契約を結ぶまでです。
これだけでは任意後見制度が始まるわけではありません。
■ステップ3実際に判断能力に衰えが出たら、任意後見受任者、または配偶者が存命で配偶者の判断能力に問題ない場合には配偶者が、ご自身で判断能力の衰えが出てきたと感じたとしてもご自身ができるようであればご本人が、「任意後見監督人」選任の申立てを家庭裁判所にします。
この「任意後見監督人」は、家庭裁判所により選任され、任意後見人がしっかり仕事をしているのかを把握し、任意後見人の事務の監督を行います。そしてこの任意後見監督人は、家庭裁判所の監督を受けることになります。
■ステップ4家庭裁判所が必要性を判断し、任意後見監督人を選任します。
■ステップ5任意後見監督人が選任された時点で、任意後見契約の効力が生じ、任意後見契約に従った支援が始まります。支援する人の呼び名も“任意後見受任者”から“任意後見人”になります。そして任意監督人が選任された旨が法務局に登記されます。
以上が任意後見についての概要になります。
「もっと知りたい、任意後見人には専門家になってもらいたい、任意後見契約内容を相談したい」などのご相談や、手続きをサポートする司法書士をお探しの場合は、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートのホームページをご覧ください。こちらに、“相談窓口を検索”という項目がありますので、そこから最寄りの支部を検索し、お問い合わせください。