「私はどこでどんなふうに生まれたの?」。幼い頃、母親や父親にそんな問いかけをしたことはないでしょうか。子どもは皆、自分が小さかった時のことを知りたがるものです。「自分がだれのもとに生まれ、どんな子どもであったか」という“出自”にまつわるエピソードは、人がアイデンティティーを形成していく上でなくてはならないものです。
自身で産んだ子どもにも、夫婦のなれそめやその子を望んだ思い、幼い頃のエピソードを伝えるのと同様に、養子であるわが子に出自にまつわるエピソードを伝えることは、子どもの健やかな成長に必要不可欠な要素です。
養子縁組の真実告知では、子どもに「自分たちから生まれていない」ことを伝えます。親子の間に血縁関係がないことは出自に関する大切な事実であり、必ず伝えなければなりません。それ以上に伝えなければならないのは、「私たちが望んであなたと出会えた」こと、「あなたの成長に責任を負う親である」こと、そして「あなたが大好き」だという“真実”です。
特別養子縁組制度ができた当時は、養子縁組や里親といった非血縁家族への社会の理解は乏しく、親の側にも子どもが養子であることを隠そうという風潮が根強くありました。今では制度への理解も進み、国際結婚や連れ子再婚も増えて、家族の形も多様化しています。2016年に15歳未満の子どもと養子縁組をしている家庭に真実告知について尋ねた民間機関のアンケート調査では、回答者の85%が真実告知を「した方がいい」と答え、74.5%が「(既に)真実告知をした」と答えました。真実告知をした年齢は「3歳」が最も多く、「4歳」「5歳」と続き、回答者のほとんどが小学校入学前に真実告知を済ませていました。(出典:「153のこたえと41のものがたり:真実告知調査報告書と我が家の告知事例集」 公益社団法人家庭養護促進協会大阪事務所編)
真実告知に定型はありません。家族の形、子どもの年齢や性格によっても伝え方はさまざまです。住んでいる地域や夫婦の性格、考え方、家庭の文化によっても違うでしょう。筆者が知る養親の方々はみな、子どもがおしゃべりを始める2~3歳から、その年齢の理解度にあわせた表現やシチュエーションで、上記の“真実”を繰り返し伝えています。真実告知を通じて、親はいつでも子どもの最大の理解者であること、何があっても子どもを守るというメッセージを同時に伝えているのです。