◎妊活女性にとってのサプリメント
妊娠前の女性の栄養状態が、妊娠する力や妊娠後の母体の合併症リスクや胎児の成育、さらには、出生児の長期に渡る心身の健康状態にまで影響を及ぼすことが、近年の多くの研究で明らかになっています。
そのため、妊活女性は、5大栄養素を過不足なく摂取することが極めて重要で、それは、毎日バランスのとれた食事をとることでしか実現できません。もし、偏食や欠食などで食事の栄養バランスが悪く、必須微量栄養素の不足が疑われる場合、効率的に補充することを目的にサプリメントを使います。
つまり、食事を補完し、食事の質を高めることがサプリメントの役割です。
◎葉酸はすべての妊活女性がサプリメントで補充すべき
葉酸は、すべての妊活女性がサプリメントで補充すべき栄養素です。なぜなら、葉酸は新しい細胞がつくられることに関与しているからです。新しい細胞が急増する妊娠時はまさにその時。不足しやすい時こそ補充した方がいいでしょう。
また、妊娠前からの葉酸の十分な摂取が、胎児の先天異常(神経管閉鎖障害)の発症リスクを低減させることも、多くの疫学研究で明らかになっています。
葉酸はさまざまな食品に含まれていますが、水溶性で熱に弱いことから、調理中に量が減ることや、食品中の葉酸は吸収率が50%程度と低いことが知られています。また、日本人の約15%に葉酸をうまく使えない遺伝的体質をもつ女性がいることを考えると、必要量が増加する妊娠、出産に際しては、食事だけでは間に合わないのです。
そのため、厚生労働省でも、妊娠の可能性がある女性は食事に加えて1日400μgの葉酸をサプリメントなどから摂取することを推奨しています。
◎葉酸以外のサプリメントは食事内容次第
毎日バランスのよい食生活を心がけていれば、葉酸以外のサプリメントは不要です。葉酸以外のサプリメントが必要かどうかは、普段の食事内容次第です。
もしも、偏食や欠食、また、外食や加工食品などを食べる頻度が高く、微量栄養素の不足が懸念される場合は、マルチビタミンミネラルのサプリメントでビタミンやミネラルをまんべんなく補充することをお勧めします。
また、魚をあまり食べない場合、魚が唯一の供給源であるオメガ3脂肪酸のDHAやEPAが不足している可能性が高くなりますので、サプリメントでDHAやEPAを補充することが推奨されます。
◎男性不妊とサプリメント
男性不妊原因の約7割は原因不明の造精機能障害(精子がうまくつくれない)です。原因不明であることから、当然、特効薬はありませんが、近年、そのようなケースの多くに活性酸素が関与していることがわかってきました。
精子は、宿命的に活性酸素に弱く、精子をつくる働きや運動能力、精子機能等が損なわれることがあります。そのため、原因不明の造精機能障害の場合、過剰な活性酸素が発生しないような生活習慣の改善ともに、抗酸化療法として抗酸化サプリメントが使われることがあります。抗酸化サプリメントの成分には還元型コエンザイムQ10やビタミンC、ビタミンE、L-カルニチン、亜鉛、セレンなどがあります。
ただし、一般精液検査では、過剰な活性酸素が男性不妊を引き起こしているかどうかはわかりません。可能であれば、精液中の酸化ストレスを測定したり、精子DNAフラグメンテーションインデックス(DFI)検査を受けたりすることで、抗酸化サプリメントの必要性を調べることが可能です。
◎精液検査が正常でもサプリメントが有効なことがある
精液検査では、主に精液中の精子の数や運動性、形態などがわかりますが、精子の質を把握するには十分ではありません。たとえ、精液検査が正常でも精子DNAに損傷のある精子が多い場合は、特に女性の年齢が高齢になると、受精率や胚盤胞到達率、妊娠率が低下し、流産率が高くなることがわかっています。
そのため、たとえ、精液検査結果が正常でも精子の質が低下しないように抗酸化サプリメントを補充することは意味のあることかもしれません。
もちろん、サプリメントだけでなく、喫煙や深酒をしないこと、そして、バランスのよい食生活を心がけ、適度な運動、ストレスマネジメントなど、健康的な生活に留意することが重要であることは言うまでもありません。