子どもが欲しいと思っているのになかなかできない場合には、まず検査をしてみることをお勧めします。最近の主要な検査は、主に下記の6つです。
(1)基礎体温
(2)精液検査
(3)内分泌(ホルモン)検査
(4)AMH検査
(5)子宮卵管造影検査
(6)超音波(エコー)検査
(7)フーナーテスト(子宮頸管因子検査)
(8)他スクリーニング検査
体の状態によってはこの他に、子宮鏡検査(※1)、腹腔鏡検査(※2)等が必要になる場合もありますが、検査を実施する医療機関によって、必要とする検査について考え方が異なるケースがあります。
(1)基礎体温 - 自分でできる女性側の検査です -
排卵がきちんとあるかどうか、黄体機能不全(※3)がないかがわかります。
朝目が覚めたタイミングで、婦人体温計を舌の下にはさみ、体温を測ります。体を動かし出す前の体温のことを基礎体温といいます。高温期が短い、低温期と高温期との差が小さい、高温期の体温が安定しないといった状態の場合は、黄体機能不全が疑われるなど、毎日の体温をグラフに記録すると、排卵が起きているか、いつ頃排卵日なのか、黄体ホルモンがきちんと分泌されているのかといった自分の体のコンディションがわかります。
医療機関に初めて出向く時には、2~3ヵ月分の基礎体温グラフを持参するといいでしょう。その後の検査や治療の参考になります。
(2)精液検査 – 男性側の検査です –
精液及び精子の状態を確認します。
具体的には精液の量や精子濃度、運動率、形態などを調べるものです。2日~7日程度禁欲をした後、マスターベーション法で精液を容器に採って検査をします。医療機関内での検査も可能ですし、自宅で採取後に医療機関に持参しても構いません。持参する場合は、精液が20-25度に保たれた状態で運ぶことが理想です。これくらいの温度が適温とされています(文献1, 2)
[1] Appell, R. A., P. R. Evans, and J. P. Blandy. “The effect of temperature on the motility and viability of sperm.” British journal of urology 49.7 (1977): 751.
[2] Peer, Sigal, et al. “Is fine morphology of the human sperm nuclei affected by in vitro incubation at 37° C?.” Fertility and sterility 88.6 (2007): 1589-1594.
精子の状態は測定回毎に変動することが多いため、1回目の精子が不良であった場合は複数回の検査が必要となります。
(3)内分泌(ホルモン)検査 –女性側の検査です -
卵巣機能の状態を確認します⇒ 卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)・卵胞ホルモン(エストロゲン)
黄体機能の確認(着床の検査)⇒ 黄体ホルモン(プロゲステロン)
これらのホルモンの働きはとても複雑ですが、まずは簡単に理解してみましょう。
卵胞刺激ホルモン(FSH):卵胞を育ててくれるホルモン
卵胞ホルモン(エストロゲン):そろそろ排卵というサインを送り、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くしてくれるホルモン
黄体形成ホルモン(LH):排卵させるホルモン
黄体ホルモン(プロゲステロン):排卵終了を示し、子宮内膜の状態を整えてくれるホルモン
これらのホルモンの分泌量などを調べることで、子宮や卵巣の機能や排卵の状態を確認することができます。
検査時期は、月経周期ごとにそれぞれ適したタイミングがあります。
卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞ホルモンの検査は月経3-5日目、黄体ホルモンの検査は、ホルモンの分泌がピークに達する排卵1週間後に採血しておこないます。
(4)子宮卵管造影検査 –女性側の検査です -
卵管が正常に疎通しているかどうかを確認します。
月経終了後から排卵日までの期間内におこないます。
子宮に造影剤を注入し、子宮のかたちや卵管の太さ、癒着の有無などをX線で撮影して調べます。所要時間は5~6分です。
この検査は不妊原因の特定にはとても重要な検査で、検査後に詰まっていた卵管が通って自然妊娠する場合もあります。
(5)超音波(エコー)検査 –女性側の検査です -
子宮内膜の厚さ、子宮内膜症の有無、子宮筋腫の有無や場所・大きさなど、さまざまなことがわかります。
超音波(エコー)検査とは、人の耳には聞こえない高周波数の音波を臓器に向かって発信し、返ってくる反射波を受信して、画像として映し出す検査です。
婦人科・不妊治療の医療機関では経膣超音波が一般的で、膣内にプローブという器具を挿入し、子宮の入口から直接子宮、卵巣を観察します。
(6)フーナーテスト(子宮頸管因子検査) –カップルおふたりの検査です -
女性の頚管粘液(※4)と男性の精子の適合性を調べます。
排卵期に性交を行い、その翌日に子宮の入り口にあたる子宮頚部から粘液を採取し、その粘液を検査します。頚管粘液の中で泳いでいる精子がどれぐらい存在し、前進する力があるのかを知ることで、女性の頚管粘液と男性の精子の適合性を見ます。
ただし、このフーナー試験はカップルとも問題がなくても結果が悪く出ることがありますので、結果が良くなかった場合は翌月に再試験を勧められることがあります。フーナー試験が陰性の場合や、明らかな不妊原因が見当たらない場合は採血し、抗精子抗体(※5)を検査します。
(7)他スクリーニング検査–女性側の検査です –
上記以外に、妊娠を妨げる疑わしき要因を調べる検査です。
以下すべて血液検査です。
B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIVといった感染症の検査
甲状腺機能(※6)検査
AMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査)(※7)
抗精子抗体検査
クラミジア抗原・抗体検査(※8 抗原検査は子宮頸管内の擦過による)
血液型(AMH)(ABO型、Rh)
※1 子宮鏡検査:
胃カメラのように、細い観察用の子宮鏡(カメラ)を使用して子宮内の状態や卵管の入り口の状態を観察します。観察時間は通常5分~10分ほどです。
※2 腹腔鏡検査:
お腹に約5mmの内視鏡と鉗子を挿入し、子宮や卵巣、卵管の状態を直接観察する検査です。妊娠しにくくなる要因としての卵管障害(卵管水腫)や、卵のpick-up障害を引き起こす卵管周囲の癒着の有無などがわかります。癒着や内膜症病変が認められる場合には、これを除去することで、妊娠の可能性を高めることができます。
※3 黄体機能不全:
排卵後に発達する黄体が十分に機能せず、子宮内膜を妊娠に適した状態に維持するための黄体ホルモンの分泌が不足する状態。
※4 頚管粘液:
頸管粘液は、子宮頸部(子宮の下部で腟につながっている部分)の腺から分泌されます。通常粘液は濃く、排卵前まで精子は通れません。排卵直前になると、エストロゲンの血中濃度が上昇することで、この粘液が透明でよく伸びるようになります。すると精子は粘液を通過し、子宮を通って受精が起こる卵管へと入っていけるようになります。
※5 抗精子抗体:
精子は女性のからだにとって異物です。女性の体内に精子が入ることによって、それに対する免疫反応として抗体ができることがあります。これを抗精子抗体といいます。抗精子抗体は、頸管粘液、子宮膣、卵管内に出現する抗体で、精子の表面に結合して精子の動きを止めてしまいます。
※6 甲状腺機能:
甲状腺機能低下症で卵胞発育障害をおこすことはありませんが、不育症に影響があります。
※7 AMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査):
卵子の質や数には個人差がありますが、自分の卵巣にあとどれくらい卵子が残っているか、“在庫数”を調べることができます。AMHは婦人科や不妊治療専門クリニックなどで測定が可能で費用は1万円前後、血液検査でわかります(保険適用外)。
AMH値が低かった場合、妊娠できないというわけではありませんが、AMHが低い人は閉経が近い(早い)ことも考えられるので、早めに妊娠計画を立てたほうがいいでしょう。
※8 クラミジア抗原・抗体検査:
クラミジア感染症とは日本で最も多い性感染症です。採血によって血液中のクラミジア抗体を調べる抗体検査と、子宮頸管内の擦過でクラミジアの抗原を調べる抗原検査とがあります。クラミジア抗体は過去にクラミジアに感染したことがあるかどうかがわかり、陽性であれば、お腹の中の癒着や、卵管の通過障害の存在が疑われます。 抗原検査は、現在、子宮頸管に感染しているかどうかがわかります。